病室で付き添う私に父は多分「もう帰れ」って言うだろうそして明日になったら「ちょっと来いや」と言うだろう何も言わなくても私には分かるんだよただ、今まであったはずの明日が本当にあるかどうか分からなくなってしまったからなかなか帰れないでいるんだよねでもそろそろ帰らなきゃ「もう帰れ」ってまた言われないうちにねそしてまた明日もきっと
娘がお風呂で歌ってるまるでお城に閉じ込められたお姫様が美しい声を轟かせている様にしばらくすると私の目の前にお姫様とは程遠い元気な娘が現れたそうそう我が家の元気な姫である
長い人生山もあれば谷もある死にそうになった位で逝くものかもうダメと思ってからがスタートさ最後の最後の最後まで諦めないって事なんだ花は未だ散っていないし枯れてない助かる道はきっとある
いやな事ひとつ選んで済ませましょいらない物ひとつ選んで捨てましょういい笑顔ひとつ選んで飾りましょいい言葉ひとつ選んで書きましょうひとついい事いい予感
十月五日には「今晩はもたないだろう」と思われていた父でしたが命のともし火を最後の最後まで燃やしつくしてよく頑張ってくれましたきっともう燃やすものが無くなってしまったのでしょう十月十三日一時三十六分最後は穏やかなものでした一年という病院生活本当にご苦労様でした父と一緒に過ごす貴重な時間を作って頂けたことに感謝しています本当に「ありがとう」ゆっくり休んで下さい
「おじいちゃんが居なくなってもお母さん、ちっともそんな気がしないのいつでもそばに居る気がしてちっとも寂しくないの不思議ね」と、娘に話すと「私の時もそうして」と、娘が言う私も「そうだねそうするね」と、娘に言う
「あした死んでもいいように百まで生きてもいいように考え考え生きていこやりたいことはやっておこ・・」って自分がそうなることは考えていたのに相手がそうなる事など考えていなかった行こうって誘われた時すぐ行けば良かった
父の命があとわずかと知らされた日から私は父が居る病院から帰るとすぐに夕飯の用意、お風呂、洗濯犬の散歩を済ませ翌朝になるのを待って夫と子どもを送り出しおにぎりを持ってまた父の病院に向かうそれを四日続けその後 三連休が終わってから父は静かに眠るように逝った すぐにさよならはしないでしばらく一緒に居る時間を作ってくれた 子供の頃のようにゆっくり過ごせた時間 私がこれから生きて行く為に必要な時間 本当に最後までありがとう
時の流れの中で全ての出来事が自然に終わりを迎える何の心配もいらない
父が居なくなってお金のこといろんなこと年老いた母は心配ばかりする私が付いてるんだから何の心配もいらない私が居なくても私の子供たちが居るだからね心配はいらない自分のことだけやって元気でいられたらそれだけでいいからね
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