父が旅立つ八時間程前だね 家に帰ろうかどうしようかと迷っていたこと 父はどう思っていただろう 「こんな時に帰えるのか〜」だったのか いつものように「もう帰れ」だったのか
一旦家に戻り夕食を済ませ 病院に行こうか迷いながら 少し横になった私に しばらくして見せてくれたものは 蛍光灯を点ける紐の先端 蓄光タイプだから光るのは当たり前なんだけど それにしても凄く大きく光ってるし動き過ぎだ こんなことは今までに無い 時間は十一時少し前 もしかしたら・・・ 何だか気になって大急ぎで着替えて病院に向かった 着いたのは十一時四十分 父の病室に着くと看護士さんが 「十分位前から容態が変わって今連絡しようと思っていたところ」と言う 「間に合った」 一旦帰ってしまった私に 父が教えてくれたに違いない
こんな状態の中でも 痰を吸引する時に人工呼吸器を外しても 肺の酸素量が下がらない 看護士さんは「自発呼吸しているのかな〜」と驚いた様子だ ここまで来ても父は未だ頑張っていた 最後まで生きることを諦めない 私を残して逝く事が出来ないのか 私は父の手を握り締めて見守る 父の目から涙が一滴流れ落ちる しばらくして眠るような状態が十五分位続く そんな中、心拍数が五十、四十、三十・・・、ゼロになり また三十、四十、五十・・・、百と上がって行き また下がるを繰り返しながら ゼロ、ゼロ、と続いてもまた何度か上げて 最後にはゼロ、ゼロ、ゼロ・・・・・と続いた 容態が変わってから二時間だ 見事だった 最後まで頑張る姿は凄かった 本当によく頑張ったよね ありがとうね 最後の最後まで本当にありがとうね
居なくなっても 心にずっと居るから大丈夫なものだね それにずっと 守ってくれるつもりでしょ
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